労働者の私生活上の非行は、会社外でのことであり、基本的には懲戒事由等にはあたらないが、それが企業秩序に悪影響を与える場合には懲戒事由となりうる。以下過去の裁判例をもとに判断基準を
懲戒解雇無効事例
➀妻子あるバス運転手が未成年の女性車掌と長期にわたって情交関係をもち、結果同女を妊娠させたものであって、その行為は態様等にてらせば、単なる私生活上の事故とはいえず、少なからず、会社の風紀を乱したものであるが、会社の損害としては当該女性職員が退職したにとどまり、それ以上にかかる事実が報道されるなど会社の信用を害するような事態は生じていないこと、今後の求人に影響があることは未だ予測の域をこえないこと等を理由に解雇はいきすぎで無効であるとした。
懲戒解雇を有効とした事例
➀妻子ある男性が未成年の女子職員と情交関係をもち、その結果妊娠させ、中絶させ、退職させたというもので、その態様にてらせば単なる私生活上の事故というにとどまらず、企業秩序を乱し、現に女子従業員の動揺、求人についての悪影響等を招来していること、及び運転手と車掌間の風紀維持は重要事項であり、企業の名誉信用を維持するためにも解雇することはやむをえないものであったとして解雇を有効とした。
②女性社員に執拗に電話番号を聞く等し、注意されても改めず、かえって社長を批判する等したことから、別の場所での配置転換を命じたところ、これを拒否したことから初めて解雇を言い渡した事案で解雇を有効とした。
考察
以上みてきた通り、男女の痴情で解雇する場合には、それにより企業秩序が乱された、企業の評判・信用が破壊され、当該従業員を解雇する他にないという事情が必要であると解される。従って、まずは当該職員について注意、戒告処分を行い、それでも従わない場合には配置転換を行うなどするべきであり、配置転換を拒否する或いは配置転換をしても社内外に知れ渡っており企業秩序を維持するためには解雇する他ないという状況に至って解雇が有効となるであろう。
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