労働関係

解雇はあまりに危険で難しい(痴漢編)

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通勤中に電車内で14歳の女性に痴漢行為をし、略式命令を受けたという駅係員がいたとして、皆様が鉄道会社の社長であったらどうするであろうか。

社会に対して規律を見せるためにも懲戒解雇とする方は多いのではないであろうか。

しかし、実際にあった裁判では、痴漢の態様が14歳の女性の臀部及び大腿部の付近を着衣の上から触るというもので悪質性は低かったこと、勤務中のものではなかったこと、事件がマスコミ等で報道まではされなかったこと、当該駅係員に懲戒処分歴がなかったなどの理由から一発懲戒解雇は重過ぎる、また、懲戒処分の際に行為態様、反省の態度等について考慮にいれておらず、処分過程に不備があるとして不当解雇であると判断した。

結果として裁判所は、従業員が裁判で争っている間の給料も支払うよう命じ、従業員は働くことなく約700万円の支払いを受けることができた。

本件では、率先して痴漢等を撲滅する立場である駅係員が14歳の女性の臀部等を5~6分間もの間触ったというものであり、例え私生活上の行動であったとしても、極めて卑劣な行為であり、鉄道会社にとってはある意味で商品である鉄道の価値を故意に貶めたというものであるといえるので鉄道会社が懲戒解雇をするのも当然ともいえる事案である。
しかしながら日本の解雇の基準は大変厳格であり、過剰に労働者が守られているため誤って解雇をしてしまうとそれを争われたときにとてつもない損害が会社に発生する可能性が極めて高くなってしまいます。ではこのような社員を辞めさせるにはどうしたら良かったのであろうか。この点については別の投稿で記載しております。

一方で、別の裁判では、鉄道会社職員が他社の電車内で繰り返し痴漢行為を行ったことを理由に懲戒解雇された事案で、解雇を有効とした。このケースでは、半年前に他社の鉄道で痴漢を行い、略式起訴され罰金20万円の処分を受けたことにより、会社から昇給停止及び降職されていたことや、鉄道会社職員であること等を考慮し、懲戒解雇を有効とした。

要約

以上より、痴漢等の犯罪行為があったからといって直ちに従業員を懲戒解雇することができるかというとそういうわけではなく、それが業務上のものであったのか、或いは私生活上の行為でも業務に関わるものであったのか等により懲戒解雇の有効性は大きくわかれることとなります。従業員が私生活上、業務と関係のない犯罪を行った場合に懲戒解雇処分にすることはかなりのケースで無効になることでしょう。

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