子ども・高齢者・障害者

要介護者の施設側の注意義務(車いす等編)

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車いすや等から立ち上がる際やベッドに移乗する際には転倒による事故が起きやすい。また、車いすやベッドにおいては被介助者が突然立ちあがろうとすることがあり、これを防ぐために身体拘束が認められるかという点も問題となる。

裁判例

➀要介護4で重度の認知症の入所者が椅子から立ち上がろうとした際に、転倒してしまい、傍にいた介護職員が頭をかばい支えたものの、支えきれずに転倒してしまい、大腿骨を骨折した事案で、要介護4であり、重度の認知症である入所者が椅子から突然立ち上がり転倒することは予見不可能とまではいえない。
また、介護職員は傍にいて入所者を監視していたが、更に立ちあがり防止椅子やY字型拘束帯を使用して、入所者の立ち上がりを防止しておくべきであったかが問題となったが、厚労省公表基準において示されている、高齢者の身体を拘束するには、緊急や無得ない場合、すなわち➀危険が切迫していること②他に方法がないこと③一時的の三要件を全て満たす必要があるという基準から、本件では「立ち上がり」が「即、転倒」とまではいえないため、③緊急やむをえないとはいえないとして結果を回避することはできなかったとして施設の責任を否定した。

②病院に入院していた高齢の女性につき看護師らが二時間の間女性の両上肢をベッドに拘束した行為が違法となるかについて、女性は深夜ナースコールを繰り返しておむつの交換を求め、大声を出してベッドから起き上がろうとする行為を繰り返しており、以前にも転倒したことがある等の状況では女性の身体をまもるため必要やむを得ない措置として違法ではないとした。

③ショートステイを利用していた要介護2の96歳の女性が歩行車を押して共同生活室から個室に戻る際に転倒して胸椎新鮮圧迫骨折により二か月後に死亡した事故で、Aさんは円背になっており、一般に歩行車のグリップから身体を離して押して歩くことにより足がついていかなくなる危険が指摘される状態であり、施設側も女性に対して歩行介助を提案していたこと等から転倒事故について予見可能性を認めた。
また、歩行開始のタイミングを完全に把握することを前提とした当該施設の業務体制であっても著しく困難であるのが実情であるが、可能な範囲内において歩行介助や近接した位置からの見守り等の措置を講じる義務があったと判断して、結果回避可能性があったとして過失を認めた。

要約

外に徘徊する等の突発的な事故とは異なり、転倒は日常生活で常に起こりうる事故であり、一度事故が起こると事業者側の責任とされる可能性が極めて大きいといえるであろう。認知症の程度や普段の生活状況から、要介護者の転倒等のリスクを随時見極めて対策をとる必要があり施設側の注意義務は相当に重いものとなる。

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