子ども・高齢者・障害者

障害者の施設側の管理責任(失踪編)

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障害をもっている方はその程度の差は千差万別あるが、社会生活を送る上での事理弁識能力に欠けるところがあるため、社会生活を送る上で法律上のトラブルは避けて通れないものであるが、事前にどのようなトラブルが想定されるかを知っていれば対策をすることができる。以下、実際にあった事故を題材にとりうる施策を考えたい。

事案の概要

Aは自閉症の診断を受け、知的障害(愛の手帳)判定基準において、平成14年9月24日に4度(軽度)、平成16年1月8日に3度(中度)、平成18年10月5日に2度(重度)、平成22年10月12日に2度(重度)、平成26年11月17日に1度(最重度)の判定を受けていたところ、本件施設を出て行方不明となり、山林で遺体で見つかったという事案。
その具体的な経緯は次のようなものであった。当該指示を受けた利用児童により東棟玄関扉の電子錠が解錠された後、この玄関扉が解錠されたままの状態となったため、Aが同日午後4時45分頃に東棟玄関から本件施設を出てしまった。Aと同時に本件施設から出た利用児童については、本件施設付近にいたため、ほどなく発見され、棟内に連れ戻されたが、その際に他の利用児童の所在確認を行わなかったこともあって、担当職員がAの不在に気付いたのは夕食前の同日午後6時頃のことであった。なお、本件施設においては、平成26年11月30日及び平成27年4月18日の二度にわたり、利用児童が本件施設から無断外出してしまう事件が発生していた。
本件施設を出たAは、バスに乗ってN山北口で下車した後、O線N駅から電車に乗ってO線N山口駅で下車し、更にケーブルカーに乗ってN山駅まで行き、同日午後6時頃にはP寺前を通過し、その後何らかの原因で死亡し、山林で遺体で発見された。
裁判所は、施設側の責任を認めた。

賠償金額

賠償金額として、施設側は障害者であることから就労不能であることを前提に判断すべきと主張したが、裁判所は、特定の物事に極端にこだわる自閉症の一般的な特性などにも照らせば、同人には、特定の分野、範囲に限っては、高い集中力を持って優れた稼働能力を発揮する蓋然性があり、49年に及ぶ長期の就労可能期間のいずれかの時点では、その有する潜在的な稼働能力が顕在化し、障害者でない者と同等の、場合によっては障害者でない者よりも優れた稼働能力を発揮した蓋然性は高いというべきであり、その逸失利益算定の基礎となる収入については福祉的就労を前提とした賃金や最低賃金によるのではなく、一般就労を前提とする平均賃金によるのが相当であるものの就労可能期間を通じて約238万円の年収を得られたものと控え目に認定するのが相当であるなどとして、逸失利益につき総額約5212万円の限度で認定した。

予防策

本件施設においては、Aが行方不明となったことを契機に、その後は、玄関の電子錠に加え、シリンダー錠による施錠を徹底する、下校後の人員確認を徹底する、持ち場を離れる職員に代わって他の職員が代理を務めることを徹底する、児童の飛び出し防止のため、敷地内に外周フェンスを徹底するという再発防止策を講ずることとしたようである。
他にも考えられる対策として、玄関にブザーを設置する、親御さんの理解を得てGPS機能付きの携帯をもたせる等があるであろうか。

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