子ども・高齢者・障害者

要介護高齢者の施設側注意義務(転倒、転落編)

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要介護施設等において、要介護者施設の職員は、要介護者が事故を起こしたり、或いは事故に巻き込まれないようにする注意義務を負っている。しかしながら、事故が起きたからといってすぐに施設側に責任があったとされるのではなく、
➀施設側が当該事故を予見できたのか、
②予見できたとしても当該事故を回避することが現実的にできたのか
という視点から施設側の責任が判断されます。例えば転倒事故を防ぐために、常時、高齢者を監視することは現実的ではないので、あらゆる転倒事故を回避する義務までを負うわけではありません。

施設側の注意義務

Ⅰ入所者に対する注意義務
入所者に対しては、通常家族、医師、生活状況等から、様々な情報を既に認識しており、当該情報に基づいた高度な注意義務が課される。

Ⅱ通所介護契約における注意義務
施設入所者とは異なり、通所介護の場合施設側が全ての事情を把握しているわけではないので、それまでに把握していた情報に基づく注意義務を負うに過ぎない。

Ⅲ訪問介護契約における注意義務
あくまで自立した生活をおくることができるように援助することが目的であり、本人の意思に反してまでサービスを続ける必要もないため、高度な注意義務は認められない。

具体例

Ⅰ入所者についての注意義務裁判例

➀要介護2の高齢の男性がベッド脇で転落していた事故で、施設側は入所者が夜間徘徊して転倒する危険性があることを認識していたから、入所者が夜間に転倒して負傷しないよう注意義務を負っていたところ個室に離床センサーを取り付けて職員が夜間そのセンサーが反応する都度、部屋を訪問し、入所者を臥床させるなどの対応をしていた。また、職員は、夜間、少なくとも2時間おきに定期的に巡回して入所者の動静を把握していた。さらに、転倒を回避するために、原告の介護支援専門員に対し、本件事故前に退所させることや睡眠剤の処方を相談していた。加えて、ベッドには、転落を防止するための柵が設置されていたこと等から注意義務違反はないとした。

②要介護1の高齢の女性が、トイレに行こうと立ちあがったところ足を滑らせて転倒し骨折したという事案で、医師の指導書には転倒に注意すべき旨の記載があるが、その根拠事実がなく、一方で、入所以来転倒等はなく、家族も転倒については心配していなかったこと等から注意義務違反を認めなかった。

Ⅱ通所介護契約における注意義務裁判例

➀過去に52回の通所介護サービスを利用していた高齢の女性が昼寝から目覚めた後に段差で転倒し骨折した事案で、認知症で視力も落ち、徘徊する等していたことから転倒する危険性は予見できたのであるから、注意義務違反が認められた。

②要介護5の高齢の女性で脚力が著しく低下し、本件事故の約2箇月前まで入院生活を送っていたため脚力が低下し、杖を利用するとか、壁を支えにすることで自立歩行が可能となるにすぎず、手すりや杖を利用すれば立位を保持することができたが、それも30秒から1分程度という短い時間にすぎなかったものである。また、入所者の歩行、立位時には転倒に注意し、常時見守りが必要である旨記載した介護計画手順書を作成していたことからすれば、施設側は、入所者が歩行時及び立位時に転倒する恐れがあることを認識していたものといえ、注意義務違反が認められた。

Ⅲ訪問介護契約における注意義務裁判例

視力がほとんどない高齢の女性宅にて訪問介護サービスにより派遣された介護職員が清掃を実施した後、清掃具を女性の指示通り洗濯籠に入れたが、女性が当該清掃具に膝をひっかけ、尻餅をついた事案で、注意義務違反が認められた。

 

 

 

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